このコーナーでは、歴代のフラメンコ歌手の中でも
フラメンコの発展に寄与したり、それぞれの時代を代表した
特に重要と思われるフラメンコ歌手をご紹介します。
アントニオ・チャコン 1869年生まれ
カンテの世界でたった一人 ドン をつけて呼ばれる歌手
ドン・アントニオ・チャコンは、
20世紀初頭の方なので映像はご紹介できませんが、
彼の代表作ともいえる、マラゲーニャ・デ・チャコンを聴いてください。
アントニオ・チャコンAntonio Chacónは
1869年にへレス・デ・ラ・フロンテーラで生まれ
1929年にマドリッドでなくなりました。
小さなころにみなしごになり、旅芸人の一座に拾われて、
食べる為に7歳くらいから人前で歌っていたと言われています。
現在のフラメンコのカンテのレパートリーの多くは、
チャコンによって見いだされ、世の中に紹介されたので、
現在のカンテの形を作った人と言っても過言ではないでしょう。
特に、第1回のカンテコンクールの審査委員長だったことでも知られ、
ニーニャ・デ・ロス・ペイネスやマノロ・カラコールも、チャコンによって見出されました。
ただ、あまり自分の地位や財産に執着がなかったせいか、
フラメンコの流行の浮き沈みに踊らされ、
晩年はホームレスに近い生活をしていたと言われています。
その逆に、自分が育てたフラメンコ歌手達を厚遇し守り、
丁寧にカンテを指導し、カンテの質向上に大きく寄与したことからも、
ドンをつけて呼ばれるようになったんですね。
1970~80年頃のしゃがれ声ブームの時には、
チャコンのカンテはあまり歌われていませんでしたが、
21世紀になって見直され、現在の若いフラメンコ歌手たちが、
こぞって学び、レパートリーに取り入れています。
その理由は、チャコンのカンテは、とにかく美しいからです。
その分、難易度は高く、学ぶ身としては大変で・・・
でも、歌えるようになった時の喜びも、本当に大きいのが
チャコンのカンテなんです。
CDも何枚か発売されていますので、
カンテを志す人なら、絶対にはずせないフラメンコ歌手です。
2014年6月16日筆 Naranjita