このコーナーでは、歴代のフラメンコ歌手の中でも
フラメンコの発展に寄与したり、それぞれの時代を代表した
特に重要と思われるフラメンコ歌手をご紹介します。
ファニート・バルデラマ 1916年生まれ
ファニート・バルデラマ(Fuanito Varderrama)は、
現在活躍中のイケメン・カンタオール、バルデラマのお父さんです。
1916年アンダルシアの北東部ハエンで生まれ、2004年セビージャで亡くなりました。
フラメンコ歌手で、生まれは他の場所なのに、
セビージャで亡くなる方が多いのは、
フラメンコで仕事をするにはセビージャにすむのが都合がよく、
今も多くのフラメンコ関係者がセビージャに住んでいるからです。
ファニート・バルデラマは、ファンダンゴで特に人気のあった歌手です。
ファンダンゴと言ってもファンダンゴ・デ・ウエルバではなく、
俗にファンダンギージョとも呼ばれる、1960~70年代に人気があった歌。
ファンダンギージョはゆっくりとした比較的短い歌で、
歌手は毎回その季節の行事や、その時の時事ネタなどを織り込んで歌い、
観客は毎回変わる歌詞を楽しみにしていたようです。
ファニート・バルデラマは、数多くの録音をリリースしていますが、
そのほとんどがファンダンゴで、メロディのバリエーションは少なく、
その分、歌詞は常に違うものが使われていました。
また、オリジナルの日本でいう歌謡曲のようなものも数多くヒットさせ、
そのせいもあって、テレビ出演の時はヒット曲かファンダンギージョを歌い、
純粋なフラメンコを歌う事は少なかったようです。
当時のフラメンコ歌手の多くは、私の師匠のナランヒートもそうなんですが、
歌謡曲風のオリジナル曲をリリースすることが多く、
フラメンコ歌手の歌うヒット曲も多数生まれています。
テレビの歌謡番組にも、多くのフラメンコ歌手が
ヒット曲とカンテの両方を歌っていたそうです。
当時のフラメンコ歌手の人気のほどがわかりますね。
その後、時代がかわったこともあって
フラメンコ歌手はフラメンコしか歌わないようになり、
それにつれて、カンテ人気も少しずつ落ちて行ったと言われています。
フラメンコ歌手は、純粋にカンテだけを追求するべきなのか、
カンテを多くの人に聴いてもらうためにも、
一般の人にも聞きやすいオリジナル曲を持つべきなのか、、、。
現在では、もともとフラメンコを歌っていた人でも、
オリジナル曲を歌う人はポップス歌手となり、
フラメンコも歌うことは少なくなりました。
2014年6月16日筆 Naranjita