このコーナーでは、歴代のフラメンコ歌手の中でも
フラメンコの発展に寄与したり、それぞれの時代を代表した
特に重要と思われるフラメンコ歌手をご紹介します。
エンリケ・モレンテ 1942年生まれ
エンリケ・モレンテ(Enrique Morente Cotelo)は、
1942年グラナダに生まれ、2010年マドリッドで亡くなりました。
幼いころから、グラナダのカテドラル(街の中心の一番大きい教会)の
聖歌隊として歌っていたのですが、その後、地元でどんどん頭角を現し、
14歳の頃にはマドリッドでプロのフラメンコ歌手として歌い始めたそうです。
主にペペ・デ・ラ・マトローナに指導を受けカンテを学び、
ドン・アントニオ・チャコンの録音をお手本としたと言われています。
1960年代からは、スペイン全土のみならずニューヨークやワシントンなど
アメリカ各地でもコンサートを行いました。
その後の活躍ぶりは、日本でもご存知の方も多いと思います。
ところで、エンリケ・モレンテと言えば、
俗にモデルノなフラメンコ歌手と呼ばれています。
モデルノというのは、伝統的なスタイルを使わず、
カンテのバックにジャズのバンドを用いたり、
他のジャンルの音楽の要素を伴奏のアレンジに取り入れたりと、
革新的な方法を用いるアーティストのこと。
エンリケ・モレンテは、確かにバックにはモデルノな要素を使いましたが、
カンテ自体は、伝統的なメロディや歌いかたをきっちりと守った歌手でした。
今日ご紹介するのは、ミサ・フラメンカ(フラメンコ式礼拝)、
1989年のクリスマスにサン・エステバン教会で行われたものです。
映像は30分ほどの長いもので、
まずはクリスチャンにはおなじみのキリエのコーラスから始まります。
キリエは多くの作曲家によって作曲されている定番曲ですが、
フラメンコでのキリエは、私も初めて聞きました。
その後、ギターなどの楽器も入り、グロリアへと続きます。
メロディや演奏の雰囲気はフラメンコですが、
歌詞は教会でおなじみの聖書の一説だったり、
普通の讃美歌と同じものですね。
日本ではあまりイメージがないかもしれませんが、
このように、フラメンコとキリスト教は密接に結びついています。
ミサ・フラメンカでなくても、
カンテの歌詞にはキリスト教の信仰を歌ったものが多いですし、
なによりスペイン語自体が、キリスト教がベースにある言語です。
ですから、スペイン語の勉強、特にカンテを志す方には、
キリスト教の知識が絶対に必要になります。
もちろん日本語で、子供向けの本でも構わないので、
一度、キリスト教の考え方をまとめた本を読んでみてくださいね。
2014年6月16日筆 Naranjita