このコーナーでは、フラメンコの用語をご紹介します。
日本では、様々な音楽ジャンルに、専門の用語があるせいか、
フラメンコでは、独特の用語を使うように思われるかもしれません。
でも、本場スペインではプロのアーティストも一般のスペイン語を使って説明していて、
特にフラメンコ専用の用語というものはありません。
ただ、スペイン語は、日本語に比べると単語の数が少なく、
ひとつの単語をいろいろな意味に使いまわすので、
私たちから見ると、誤解も起きやすいでしょう。
勘違いしないコツは、フラメンコ用語らしいスペイン語が出てきたら、
普通の西和辞典を使って確認することですね。
フラメンコ音楽用語 5)リブレ Libre
5)リブレとは?
フラメンコの魅力はリズムだとおっしゃる方も多いと思います。
激しいブレリアやのりのりのタンゴも魅力的ですが、
リブレと言われる、拍子のはっきりしない歌もまた大きな魅力のひとつです。
リブレは辞書で引くと、日本語では自由、
つまり英語のフリーと同じ意味をもつと書いてあります。
では、一体何がフリーなのでしょうか?
リズムがまったく自由だということなのでしょうか?
スペインのフラメンコの本にも、長いあいだ、
リブレの歌は拍子がなく、拍は全くの自由であると書かれていました。
でも、実は歌っている本人にはしっかり拍子の概念があり、
拍もちゃんと意識して歌っているんですよ。
以前は、アーティスト自身、なかなか本を書くような学者とは
付き合いがなかったので、このような誤解が生まれてしまったのでしょう。
最近では、歌い手自信が学者に直接発言する機会も増え、
リブレという言葉の概念も、やっと正しく伝わるようになってきました。
では、その正しい ”リズムがリブレ” の意味をご紹介しましょう。
それは、拍子の概念がない、という意味での拍子の自由、
つまり、リブレではなくて、拍子の概念はあり、
ちゃんと拍を数えることもできるけれども、
その1拍1拍の長さが自由という意味でのリブレということなんです。
一般に音楽は、最初にある一定の速さ、たとえば♩=60で始めたら、
多少のリタルダントなどがあっても、
各1拍づつの音符の長さはほぼ1秒ずつになるものですが、
このフラメンコのリブレの場合は、
最初の1拍が1秒、次が0.5秒、次が10秒などどいうこともありえ、
各拍の長さが大きく変わることが特徴です。
リブレで歌われる歌の、本来のリズムは、
ファンダンゴやシギリージャが主で、
曲種としては、ファンダンゴ系で言うと、マラゲーニャやグラナイーナ、
シギリージャ系では、トナーやデブラなどがあります。
また、各曲のどの拍を長くするか短くするかは、ある程度決まっていますが、
歌い手の裁量に任されている部分もかなり大きく、
その為にも、リブレの歌は、かなり歌唱力を要求される歌と言えるでしょう。
また、ソレアやアレグリアスのような、一般にリブレで歌われることがない歌でも、
オープニングの部分だけリブレにしたりして変化を付けることは20年ほど前から流行し、
現在では定番の演出方法となっています。
2008年2月29日筆 Naranjita