このコーナーでは、フラメンコの用語をご紹介します。
日本では、様々な音楽ジャンルに、専門の用語があるせいか、
フラメンコでは、独特の用語を使うように思われるかもしれません。
でも、本場スペインではプロのアーティストも一般のスペイン語を使って説明していて、
特にフラメンコ専用の用語というものはありません。
ただ、スペイン語は、日本語に比べると単語の数が少なく、
ひとつの単語をいろいろな意味に使いまわすので、
私たちから見ると、誤解も起きやすいでしょう。
勘違いしないコツは、フラメンコ用語らしいスペイン語が出てきたら、
普通の西和辞典を使って確認することですね。
フラメンコ音楽用語 9)サリーダ SALIDA
9)サリーダとは?
サリーダは、直訳すると出口という意味です。
音楽として使う場合は、曲の導入部という意味で使います。
また、フラメンコ歌手が、メインの歌を歌う前に、
スキャットのような歌詞のない短いメロディを歌うことがありますが、
その部分もサリーダと呼んでいます。
歌にサリーダがつくかどうかは、曲(パロ)によって決まっていますが、
サリーダがない曲でも、歌い手が即興的にサリーダを作曲して歌うこともあります。
スペインのアンダルシア地方では、夏になるとカンテフェスがよく開かれるのですが、
一晩に多い時は7,8人の歌手が参加し、それぞれ1時間くらい歌うので、
夜10時ごろに始まっても、終わるのは明け方になってしまいます。
観客は、朝までずっと聞いているのは大変なので、
次の歌手が出てくると、取りあえずサリーダを聞いてみて、
その歌手の歌をそのまま聞くのか、
次の歌い手が出るまで食事や休憩を取るのかを決めるのだそう。
サリーダの後で観客の出入りがあるので、
サリーダを歌い終わったらしばらくインストの部分を作り、
客の出入りが落ち着いたところで、メインの歌を歌うことになります。
という訳で、サリーダは別名歌手の名刺代わりとも呼ばれ、
最初だから取りあえず軽く歌っておく、などということはせず、
短い中にも、自分の持てる力をすべてこめて歌う習慣が出来たのです。
現在では、ソロコンサートで観客の出入りがない場合でも、
サリーダを歌った後、しばらくギターだけの部分を作る事が習慣となっています。
2014年7月1日筆 Naranjita