このコーナーでは、フラメンコのパロ(曲種)についてご説明します。
意外と思われるかもしれませんが、ある曲があるとき、
その曲がフラメンコかどうかを決めるポイントは、実はメロディなんです。
フラメンコは各パロ(曲種)ごとに決まったメロディがあって、
パロ(曲種)によっては、ひとつのパロ(曲種)に複数のメロディがあることもあります。
それらのメロディが全部集まって、フラメンコを作っています。
フラメンコには譜面もないので、パロ(曲種)の分類はあくまでも耳だけが頼り。
フラメンコ好きを自負される方にも、パロ(曲種)の分類はかなり難しいことです。
フラメンコでは、いくつかのパロ(曲種)を集めたグループ単位で、
パロの勉強をすることが一般的ですので、グループに分けてご紹介します。
(尚、当サイトのグループへの分類方法はカンテ・デ・ナランヒータのオリジナルです。)
(グループ全体の説明から、各パロの説明へと読み進めると理解しやすいようになっています。)
第1グループ カンティーニャス系
カラコレス
カンティーニャス系の曲で、
アレグリアスの次に知られているのがカラコレスでしょう。
カラコレスとは、スペイン語でかたつむりの事で、
スペインでは初夏の風物詩として食べられており、
特にアンダルシア地方では、バルの定番おつまみになっています。
この時期、町の角々には、生きているかたつむりを売る屋台がでるのですが、
その売り声もまた風物詩となっていて、フラメンコのカラコレスは、
このかたつむりの売り声がもとになって名づけられています。
もともと、カディスで軍歌として愛されていた地元の歌に、
この初夏のかたつむりの売り声、
そして冬場の売り声の代表、焼き栗売りの売り声を加えて作られました。
現在の形に作ったのは、フラメンコの世界でただ一人
DON(ドン)という愛称で呼ばれるアントニオチャコン。
マドリッドのお客さんに披露するために、ともと軍歌だった歌の部分の歌詞も、
物売りが口上を述べる歌詞に変えました。
20世紀の初頭、カンテの文化が華やかに盛り上がった頃に生まれたカラコレスは、
メロディ自体の難易度もかなり高く、一息も長いので、
歌い手にかなりの肺活量を要求するカンテとしても知られています。
リズムは ”アレグリアス・ソレア” を使い、
歴史的にも他のリズムで歌われたことはあまりありません。
また、長い1つのメロディで出来ているので、
他のカンテと混ぜ合わせて歌うこともあまりなく、
この1曲で完成しているカンテ(カンテコンプレート)とも呼ばれています。
そして、その独特のメロディの長さゆえ、歌詞もほんの数種類しか知られていませんし、他のカンテと歌詞との使い回しもできません。
踊る場合は、女性が扇を持って踊ることが多く、歌詞の中に出てくる、
初夏の暑い日にかたつむりを買いに来たあまり若くない奥さん
(歌詞の中に、お世辞で、まだ結婚したてみたいにきれいと出てきます。)を
イメージしていると思われます。
カラコレスで代表的な歌手 アントニオ・チャコン ナランヒート・デ・トリアーナ
アレグリアス・ソレアのリズムへ
2008年5月11日筆 Naranjita
2012年2月27日加筆 Naranjita