このコーナーでは、フラメンコのパロ(曲種)についてご説明します。
意外と思われるかもしれませんが、ある曲があるとき、
その曲がフラメンコかどうかを決めるポイントは、実はメロディなんです。
フラメンコは各パロ(曲種)ごとに決まったメロディがあって、
パロ(曲種)によっては、ひとつのパロ(曲種)に複数のメロディがあることもあります。
それらのメロディが全部集まって、フラメンコを作っています。
フラメンコには譜面もないので、パロ(曲種)の分類はあくまでも耳だけが頼り。
フラメンコ好きを自負される方にも、パロ(曲種)の分類はかなり難しいことです。
フラメンコでは、いくつかのパロ(曲種)を集めたグループ単位で、
パロの勉強をすることが一般的ですので、グループに分けてご紹介します。
(尚、当サイトのグループへの分類方法はカンテ・デ・ナランヒータのオリジナルです。)
(グループ全体の説明から、各パロの説明へと読み進めると理解しやすいようになっています。)
第5グループ イダイブエルタ系
イダイブエルタ系
スペインは、15世紀末に、
アメリカ大陸をコロンブスが発見してから、
中南米に広大な植民地を持つまでに発展しました。
植民地へ向かう船の玄関口だったのが、
港町カディスです。
スペイン本土から、多くの資本家がカディスの港から中南米にわたり、
植民地時代の終わりとともに、また本土へ引き上げました。
アメリカンドリームを夢見た人々とともに、
多くの歌手やダンサーなどのアーティスト達も海を越え、
それにともなって、フラメンコの歌<カンテ>も海を渡ったのです。
そうして海を渡ったカンテは、陽気な中南米の音楽に影響され、
スペインを出発した時とは少し違った形で戻ってきました。
そんな、中南米の音楽の影響を受けたカンテを、
イダ(行き) イ(と) ブエルタ(帰り)、つまり往復したカンテと言います。
これらのカンテの故郷はあくまでもスペイン本土ですし、
植民地で歌っていたのもスペイン人フラメンコ歌手達です。
でも、スペイン本土にはまだ無かった、タンゴのリズムや、
独特のメロディラインなどに、中南米の影響が見られます。
イダイブエルタのカンテの特徴は、
メロディがとにかくロマンチックなこと。
明るくかわいらしいものや、切ないものなどがあって、
どれをとっても、甘い美しいメロディです。
リズムはこのグループのカンテはすべて4拍子ですが、
ゆったりとしていて、あまりはっきりとリズムを刻むことはしません。
あくまでも美しいメロディを楽しむのがイダイブエルタ系なのです。
イダイブエルタ系のカンテが大流行したのは、20世紀前半のこと。
その後、しばらくあまり歌われない時期が続きましたが、
昨今のカンテのリバイバルブームもあって、
21世紀になってから、多くの若いフラメンコ歌手に歌われるようになりました。
イダイブエルタ系のカンテには以下の4つのパロ(曲種)があります。
グアヒーラ、コロンビアーナ、ミロンガ、ビダリータです。
以前は、ペテネーラもイダイブエルタだと思われていましたが、
同名の歌が南米にあり、その曲と勘違いしたということがわかったので、
現在では、イダイブエルタ系からははずされています。
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ミロンガの解説へ
ビダリータの解説へ
2012年7月31日筆 Naranjita
2012年9月15日加筆 Naranjita