このコーナーでは、フラメンコのパロ(曲種)についてご説明します。
意外と思われるかもしれませんが、ある曲があるとき、
その曲がフラメンコかどうかを決めるポイントは、実はメロディなんです。
フラメンコは各パロ(曲種)ごとに決まったメロディがあって、
パロ(曲種)によっては、ひとつのパロ(曲種)に複数のメロディがあることもあります。
それらのメロディが全部集まって、フラメンコを作っています。
フラメンコには譜面もないので、パロ(曲種)の分類はあくまでも耳だけが頼り。
フラメンコ好きを自負される方にも、パロ(曲種)の分類はかなり難しいことです。
フラメンコでは、いくつかのパロ(曲種)を集めたグループ単位で、
パロの勉強をすることが一般的ですので、グループに分けてご紹介します。
(尚、当サイトのグループへの分類方法はカンテ・デ・ナランヒータのオリジナルです。)
(グループ全体の説明から、各パロの説明へと読み進めると理解しやすいようになっています。)
第10グループ ブレリアとタンゴ
ブレリアとタンゴ
日本のフラメンコの多くの方が、
ブレリアが好き、タンゴが好きと
おっしゃるこの2つの曲種を、
私はあえてひとつのグループとして
ご紹介したいと思います。
なぜこの2つの曲種をひとつのグループにして紹介するかというと、
数多く存在するフラメンコの曲種の中で、
この2つの曲種にしかない、かなり特殊な特徴があるからなんです。
曲種の説明のところにも書きましたが、
フラメンコの曲種を決めるのは、あくまでもメロディです。
っていうか、、、ほぼメロディ、、、です。
実は、ブレリアとタンゴには、メロディに制限がありません。
リズムで曲種が決まります。
今までのフラメンコの決まりが、いきなり届かないのが、
このブレリアとタンゴ。
私はこっそりフラメンコのグレーゾーンと呼んでいます。
ブレリアは、2拍子と3拍子のまざった12拍子の早いリズムで、
ずっと続けていると、強いグルーブを感じるので、、
ブレリアからフラメンコファンになる人も多いようです。
2拍子と3拍子の混合拍子は、インド音楽やアラブ音楽にも見られますが、
フラメンコのブレリアは、特にアクセントのある拍が、
前半は3拍おきに、後半になって2拍おきになるので、
リズムに、急き立てられるような、掻き立てられるような感じがあって、
日本人でも、慣れると高揚感を感じる人も多いようです。
タンゴも、フラメンコでは、単純に2拍子系のリズムという括りしかないので、
その時に流行している2拍子系のリズムを使うことができます。
21世紀になってからは、スペインでも南米系のリズムが流行しているので、
フラメンコのタンゴにも、南米の香りがするようになりました。
ところで、
リズムだけが決まっているってどういうこと?
そう疑問に思われる方もいらっしゃると思いますので、説明を少し。
簡単に言うと、ブレリアかタンゴのリズムに乗せさえすれば、
どんなメロディを歌ってもフラメンコのブレリアかタンゴになるということです。
スペインでよく聞くのは、何年か前にはやった流行歌を、
フラメンコ歌手がブレリアのリズムに乗せてステージで歌う光景です。
日本の歌が好きだったあるスペイン人フラメンコ歌手が、
日本の流行歌を聞き覚え、ブレリアにして歌ったのはフラメンコ界では有名な話。
アメリカのミュージカルナンバーを、タンゴにのせて歌う、
大物スペイン人フラメンコ歌手もいます。
もちろん、伝統的によく歌われているブレリアやタンゴのメロディも存在します。
でも、世界中のどんな歌でも、ブレリアやタンゴのリズムに乗せさえすれば、
フラメンコの舞台で、フラメンコの曲として歌うことができるなんて、
かなり大胆な考え方だと思いませんか?
という訳で、
スペインでフラメンコのライブでブレリアやタンゴを聞いた外国人が、
そこで歌われているメロディこそが、
フラメンコのブレリアやタンゴのメロディだと思い込んで、
かなりの勘違いをしてしまうこともよくあるようです。
ブレリアとタンゴ以外のフラメンコの曲は、
どれもメロディが美しく、聞きごたえがあっていいのですが、
複雑で難解なので、そればかり続くと観客は疲れてしまいます。
そこで、ブレリアやタンゴに御馴染みのメロディをのせて歌うことで、
ちょっとした箸休め的に、観客に気楽に楽しんでもらおうという嗜好だと言えば、
わかりやすいでしょうか。
フラメンコ歌手にとって、ブレリアやタンゴはあくまでも箸休め。
フラメンコの繊細で特殊なメロディを楽しんでもらってこそ存在する、
曲種だということをお忘れなく。
このグループには、ブレリアとタンゴの2つの曲種が含まれます。
ブレリアの解説はこちら
タンゴの解説はこちら
ブレリアのリズムの解説へ
タンゴのリズムの解説へ
2012年10月10日筆 Naranjita